DLsiteで「GOGO！55時間 少年画報社　無料で全作品読める！試し読みキャンペーン」なるキャンペーンが開催されており、2021年10月17日（日）23:59まで全ての作品が全部タダで読めるようになっている。もう折り返しも過ぎた頃になってしまったが、皆様の参考になればと思い個人的に好きな作品を紹介する。

水上悟志『惑星のさみだれ』

雨宮夕日はごく普通の平凡大学生だった…… ハズが、ある日現れた喋るトカゲに「地球の危機」を救う協力を依頼される。 拒否するまもなく、既に指輪と能力が与えられ、早くも敵に襲われてしまった 夕日を救ったのはなんとお隣さんの少女・さみだれ。 救世主の降臨と思いきや、実は地球征服を企む魔王だった……。 平凡な日常と奇妙な世界が交錯する新感覚ご近所ストーリー!!

主人公の雨宮夕日はひねくれた大学生で、過去のトラウマから冷淡な合理主義者を装って弱さを隠している。ある朝、人語を話すトカゲから地球を破壊しようとする"魔法使い"の存在を告げられ、世界を救う「指輪の騎士」として能力を与えられて朝日奈さみだれを姫とする騎士団の一員となる。しかし朝日奈さみだれもまた魔法使いを倒したのちに自らの手で世界を破壊しようと目論んでおり、雨宮夕日は彼女の思想に惹かれて忠誠を誓う。騎士団の面々は様々な秘密や問題を抱えつつも魔法使いの刺客である12体の泥人形との戦いの日々を過ごしていく。仲間の死、自身やさみだれの家庭の問題を乗り越えて騎士団のメンバーはみな人間的に成長していく。
なんといっても心理描写がよい。戦いの中で様々な人物が自らの思いを果たして時に散っていき、誰かがその思いを受け継いで前に進む様子が丁寧に描かれている。全10巻とコンパクトにまとまっており、最大瞬間風速的なエモーショナルなシーンが連続し勢いで読ませる。

内藤泰弘『トライガン』

7都市のひとつを灰に変え、 600億$の賞金首として手配された伝説のガンマン、ヴァッシュ・ザ・スタンピード。 そんな力を持つとは思えない程温厚な男。 無関係な人達を守る為に今日も戦う! ハートフルガンアクション。

西部劇のようなバイオレンスが支配する砂漠の星を舞台に、凄腕のガンマンながら平和主義を信条とするヴァッシュ・ザ・スタンピードの旅と戦いを描くSFアクション作品。人々との交流や事件を経て、なぜ不殺を貫くのか、物語が進むにつれヴァッシュの謎が明らかになっていく。登場人物たちの思想や生きざまがどれも魅力的に描かれている。
砂漠を走る巨大な機関車"砂蒸気(サンドスチーム）"、大口径のリボルバー、義手の隠し銃、マシンガンやロケットランチャーを搭載した十字架型の武器"パニッシャー"など魅力的なガジェットが続々登場、さらに余計な説明を排し構図で魅せるアクションが抜群にカッコいい。『トライガン』は2巻で終わるが物語は『トライガン マキシマム』へと続いていく。

Ark Performance『蒼き鋼のアルペジオ』

突然、世界各地に「霧の艦隊」と言われる謎の超兵器を搭載した戦艦群が出現。 人類はその艦隊になす術無く敗戦し、海上に出る事が出来なくなった......。 その海戦から17年後、何故か「霧」の潜水艦イ401に乗り込んだ千早群像とその仲間達は、 イ401の人体化（メンタルモデル）のイオナと共に、霧の艦隊に戦いを挑む......。 究極のSF海洋戦記!!

アニメにもなった海洋SF漫画。人類の敵・霧の艦隊に海上を制圧された時代、人類反撃の希望となる新兵器のサンプルをアメリカに届けて量産するべく、千早群像率いる「蒼き鋼」が決死の航海に向かう。迫力ある戦闘・ミリタリー描写に加えて"軍艦の中枢ユニットが美少女の姿をしている"というあまりにもオタク好みな属性の作品だが、一方で航行の自由を失った世界の描写・未知の存在と人類の相互理解などSF的な見どころもたくさんある。人類対霧の艦隊の戦争というシリアスな世界観ではあるものの、倒された敵艦（のメンタルモデル）は死なず、人間との交流を深めて次第に考えを変えていくという優しさもある（アニメ放送時は「負けたらギャグ要員」というミームも生まれた）。
アニメで大幅に省略された物語も漫画ではしっかり描かれているほか、イオナが様々なファッションをしていたりユーモアのある性格になっていたりとかなり違いがあって見比べても面白い。
全巻読めるのだがまだ完結していないので注意。

たかみち『百万畳ラビリンス』

人と関わるのが苦手な礼香はゲーム会社でバグ探しのアルバイトをしていたが、 ルームメイトの庸子と共に木造迷路に迷い込んでしまい!? ミステリーファンタジー!

ゲームデバッグのバイトに参加していた女子大生の礼香と庸子が突如として謎の巨大構造物に迷い込み、脱出を目指して探索する。畳貼りの部屋が無尽蔵に連続する異空間、空間を食べる怪物、協力者の出現や更なる異空間の存在など驚きの連続のストーリーが面白い。
著者はコミックLOの表紙等で有名なたかみち先生で、美少女に限らず風景・建物・メカ・クリーチャーのいずれも絵が上手い。電脳コイルの古い空間を思わせるような奇妙な異空間の描写や、デバッグのように物理法則の穴を突く様子がどこかホラーチックだが魅力的で冒険心をくすぐる。
上巻は出題編、下巻は解答編および結末といった構成で、探検でみつけた異空間のルールが過不足なく回収されるのでフェアなミステリとしての面白さもある。
ゲームが大好きで天才的発想を持つが時に無謀な冒険をする礼香と、現実主義で常識がありしっかり者な庸子という対照的な2人のコンビが良い味を出している。この2人の性格は夢（ゲーム）の世界に生きることと現実をみることを問いかける作品テーマの象徴にもなっている。

石黒正数『それでも町は廻っている』

人情あふれる丸子商店街に存在するメイド喫茶（カフェではない）「シーサイド」。 まさに、天真爛漫! 女子高生にして名探偵に憧れる嵐山歩鳥は、 地元丸子商店街のアイドル（?）兼お騒がせ娘。 ありふれた町のちょっとおかしなメイド喫茶を舞台に繰り広げられるドタバタ活劇!

嵐山歩鳥を中心に商店街の人々を描く、ときどきラブコメやイイ話も含む1話完結の日常ギャグ作品……と思いきや実は時系列がシャッフルされており、楽しいだけでなくミステリやパズル的要素も多く含む奥の深い作品。季節の描写やキャラの呼び方、髪型などに注目するとエピソードごとに連続していないことが分かるし、かといって適当というわけではなく何気ないコマに描かれたキャラが他のエピソードの伏線になっていたりする。『進撃の巨人』のキャラの表情などが伏線になってるのとか『僕の心のヤバいやつ』の小物から状況を察するとかが好きなオタクは楽しめると思う。
サザエさん時空とは異なり時間は進んでいるものの、エピソードシャッフルによってもたらされる円環的な時間感覚が独特の永続性を感じさせる。またタイトル回収となる13話・14話「それでも町は廻っている」や完結より前に最終回につながる物語が隠されている回など、ときおりギャグの範囲を超えた物語全体への仕掛けのようなエピソードもあり、ぜひ全部読んで味わいを堪能してほしい作品。

おわりに

無料セールばかりに気を取られがちだが、実は10/17（日）まで限定で
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が配布されており、読み切れなかった作品を安く入手できるチャンス。
この機会におトクに買いましょう。