hito-horobe.net

2025年11月の気になる新刊ピックアップ

  • 2025-11-15
  • 2025-11-15
  • 読書
img_2025年11月の気になる新刊ピックアップ/

2025年11月の気になる新刊の話です

ルリドラゴン 4 (ジャンプコミックス) コミック – 2025/11/4

発現したドラゴンの“能力”で台風を吹き飛ばし、体育祭も無事開催!!――と思ったのも束の間、体育祭実行委員のルリは全校生徒から注目されてしまい、またまた居づらさを感じてしまうことに。さらに休む間もなくルリの身体に新たな異変が生じて――!? ドラゴンガール・ルリの体育祭は波乱の展開へ。

1巻から2巻までは2年の時間を要したが、それ以降は半年に1冊ペースで順調に単行本が出ており嬉しい。


銀河特急 ミルキー☆サブウェイ ビジュアルブック 単行本 – 2025/11/4

アニメ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』の魅力を詰め込んだ公式ビジュアルブックが登場!
亀山陽平監督のロングインタビューに加え、声優・寺澤百花&永瀬アンナのインタビュー、ビデオコンテ、全ストーリー解説まで――前作『ミルキー☆ハイウェイ』情報も網羅した、“ミルキー”シリーズを愛するすべての人に贈る永久保存版!

初の公式本の登場は嬉しいが、版型が小さい・設定資料集ではないので背景の小物や設定などはそこまで見られないなど幾らか不満点がある。とはいえインタビューの内容は充実しており、既出情報についても散らばって発表された情報がある程度まとめ上げられ、さらにYouTubeの自主製作アニメだった前作『ミルキー☆ハイウェイ』もしっかり紙資料に残っている。ミルキーサブウェイについての資料は今のところアニメ雑誌とネットが中心で参照性が悪かったのでありがたい。今後の詳細な設定資料集の発売にも期待。劇場版の公開が待ち遠しい。


魔法少女イナバ 1 (ブシロードコミックス) コミック – 2025/11/8

か弱き者を救うのは、フィクションか、リアルか――。 新魔法少女参上!!

幼い頃魔法少女アニメに救われた城戸兎衣は、理想と現実のギャップに苛まれながらも日夜人助けに勤しんでいた。しかし、とある事件をきっかけに魔法少女として生きる「意味」が生まれ、彼女の人生は輝き始める…!

 成人女性が現実世界で本気で魔法少女をやっているという『劇光仮面』フォロワーな作品だけあり、あの山口貴由が帯コメントを書いている。コスプレではなく変身と言い張り、魔法少女の姿をしている間は人助けをしたり悪と戦ったりする勇気が出る。現実には敵もいなければ魔法少女の居場所もないと知りながら日夜人助けをし、社会との摩擦に苦しむ日々。だが本当の怪人が出現したことで魔法少女としての活躍の機会が訪れ、次第に「本物」になってしまう……。
 『Vドライブ!』でまんがタイムきらら作品とは思えないハードなアクションやゴア表現を描いた猫にゃん先生が本領を発揮し、可愛らしい絵柄から容赦ない狂気、欠損、バイオレンスなどを繰り出す。「正義のマントを覇王って参上!」の本当の意味が明らかになる、1巻の衝撃のラストにして物語の本当の始まりに驚愕。


未来を照らす、灯りをつくる。: アニメの制作会社が自立するために~アニメーション制作会社・P.A.WORKS 25年物語 単行本 – 2025/11/10

雪深い北陸・富山の地で、2000年からアニメーション制作に打ち込んできた、P.A.WORKS《ピーエーワークス》。『花咲くいろは』『SHIROBAKO』など数々の人気オリジナル作品を生み出した力の源は、試行錯誤の中で編み出したアニメーター育成、組織で作ることを決して諦めない制作体制、そしてファンからの「作品をずっと大切にしたい」という励ましの言葉だった。世界的に注目される日本のアニメ産業を支える人たちの、不器用で、でも夢を忘れない姿とは。

 アニメ制作会社P. A. WORKSの社史本が出るらしい。アニメ会社のオフィシャルな社史本は意外と見たことがない。出版社がP. A. WORKSと同じ富山県南砺市に所在する「地域発新力研究支援センター(PARUS)」で、P. A. WORKSアニメのノベライズなどを出版しており関係が深い。


まだまだ大人になれません 単行本(ソフトカバー) – 2025/11/12

30代兼業文筆家、ただいま「大人」の練習中!
法律的にはとっくに成人しているし真面目に働いて納税だってしているのに、
なぜか自分のことを未熟だな……と思ってしまう。
もういい歳なのに、私ってこのままでいいのか。

低空飛行でもいいじゃない。
うまくいかなくてもいいじゃない。
人とうまくやれなくてもいいじゃない(反省はしたほうがいいけど)。
幸せじゃなくてもいいじゃない(その幸せが、他者評価のためならば)。
っていうか、大人じゃなくてもいいんじゃない?

仕事、友情、恋愛、自分探し、コンプレックス──
30代兼業文筆家が、ままならぬ日々を息継ぎしながら生きのびるための、
メンタルリカバリーエッセイ!

「成人して法的には問題ないのに成熟できている気がしない」という悩みがある。そういう話をただの甘えと雑にくくって昇進したりライフステージを進めたりことで外形的に解決するのではなく、まず向き合うべきではないか……と思っていたところに丁度突き刺さるような本が登場した。


ガールズバンドクライ 公式メイキングブック 単行本(ソフトカバー) – 2025/11/14

今、一番新しいアニメーション表現を駆使した作品、『ガールズバンドクライ』。
そのイラストルックな3Dフルアニメーションはいかにして成功したのか。
『ガールズバンドクライ』制作チームへの数十時間におよぶインタビューで、メイキングの舞台裏を徹底取材。

ワークフロー詳細、シナリオ、絵コンテ、デザインラフから最終キャラクターデザインへの変遷、3Dモデル、ARを使ったロケハン、アップの情報充実について、ライブ映像制作、表情づくりのためのリグとモデリング修正、ライティング、カメラアングルと演出、美術設定や美術ボード、詳細なスタッフリストまで。
ふんだんなインタビュー、メイキング画像と完成映像の比較で構成する、『ガルクラ』メイキングブックの完全版。

『ガールズバンドクライ』初回放送時にはあの怒りや叫びを表現する3DCGの表情に本当に驚き、心の底から感動した記憶がある。2Dアニメ以上に情緒豊かな様々な所作や芝居なども、記号の集合でない生きたキャラクターを連想させた。あの突き抜けるような感情表現はどうやって実現したのか?この本では前半ですべてのベースになった設定画やイラスト、コンテなどを紹介し、後半ではそれらをいかにして3DCGで実現するかという技術が解説されている。
 それにしても3DCGなのに表情の機微がすごく、元のイラストやコンテがほぼ完全に再現されていることがわかる。さらにカメラが顔にアップする時だけアップ用のディテールが作り込まれた専用モデルが使われているらしく、その細かさもすごい。あの牛丼屋や桃香さんの家などの背景CGも紹介されており、眺めているだけで楽しいが作り込みから生々しさが伝わってくる。あの感動を技術的にも再確認できる、すばらしい本だった。


考察する若者たち (PHP新書) 新書 – 2025/11/18

なぜ映画を観たあとすぐに考察動画を見たくなるのか?
映画やドラマ、漫画の解釈を解説する考察記事・動画が流行している。
昭和・平成の時代はエンタメ作品が「批評」されたが、令和のいまは解釈の“正解”を当てにいく「考察」が人気だ。
その変化の背景には、若者を中心に、ただ作品を楽しむだけではなく、考察して“答え”を得ることで「報われたい」という思考がある。
30万部超『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』著者が令和日本の深層を読み解く!

 どうやらこの本は批評と考察の対立軸を掲げているが、そもそも批評と考察って何が違うんだといったパンドラの箱みたいな問題がある。そこにあまりにも軽装備で挑むような蛮勇を感じる。しかし著者はあの三宅香帆である。この書き手はパッケージングや説得が上手く、おそらく立ち入るべきでない箇所を器用に避けつつにまとめ上げてくるのではないかと思う 。そういう三宅香帆のような器用な書き手のことを勝手に強敵だと思っており、敵陣視察や手口を知る感覚で気になっている。


ロボットの悲しみ 新装版ーコミュニケーションをめぐる人とロボットの生態学 単行本(ソフトカバー) – 2025/11/20

人助けのためにこの世に生まれながら、本当に人の代わりにはなれないロボット。

日常生活の中に繰り出し始めたロボットと人はどうコミュニケーションできるのか

ロボット開発者の常識破りの発想と心理学者のするどい観察のコラボレーションから生まれた本。

人や動物の代わりをつとめるロボットだが、人間がロボットと交流している姿はどこか痛々しく見えることがあるという。SFなどでよく見るテーマで、しかも特に理由なく人間の温かみが大事と結論付けられることがあることに、とても不満を持っている。もっと言えば自分は明らかにロボットの方に共感するし、痛々しいとも思っていない。せめてそのメカニズムを明らかにしてほしい。著者が『弱いロボット』などの著書を持つコミュニケーションロボットの研究者・岡田美智男とのことで、そうしたロボットを冷徹と断じたくない立場からこの本に期待している。


『ゾンビランドサガ』奇跡の軌跡 (ワニブックスPLUS新書) 新書 – 2025/11/26

47都道府県の魅力度ランキングで常時最下位争いをしている佐賀県。そんな佐賀のご当地アニメが企画されたのは2014年。一つの県全体を舞台に、しかもその県内だけでストーリーが進むという酔狂なご当地アニメは前例がない。その上、ゾンビでアイドルという、二律背反にも程がある設定だ。この勝負、どこから見ても、勝ち筋が見えてこない。〝ご当地もの〟が乱立し、死屍累々となった中から、なぜ『ゾンサガ』だけが全国レベルでの、それも一過性でなく、2025年には劇場版公開に至るという持続可能なコンテンツとなったのか? メディア論の第一人者が徹底した現場取材と関係者のインタビューを踏まえて説く。

 具体的な地域を舞台にしたアニメ作品は数多くあり『ガールズ&パンツァー』など成功例も多いが、必ずしも良い印象を持たれていなかった記憶がある。ネットミームになった「オタなめんな」(2012年3月7日(水)放送のNHK「クローズアップ現代」で紹介された、千葉県鴨川市が舞台のアニメ『輪廻のラグランジェ』へのネガティブな書き込み)のことを連想する。しかし実際にはそれなりに効果を上げているらしい(記事)。
 『ゾンビランドサガ』に限ったことではないがネットで聞く評判と実際の企画・実際の経済効果は必ずしも一致しないので、こうした取材本があることはありがたく、アニメ史・アニメビジネス史的にかなり気になる。


ガリンペイロ 文庫 – 2025/11/28

連中に法や道徳なんて通じない。

人間とも思ってはいけない。

アマゾン最深部の不法の金鉱山。

男たちは「黄金(レイ・)の(ド・)帝王(オーロ)」を夢見て穴を掘る。

アマゾン川の最奥、地図上では熱帯雨林が広がっているだけの無人地帯に「黄金の地」は存在する。荒くれ者の貧乏人が巣食う金鉱脈だ。この地は誰でも受け入れる。前科の有無は問われない。IDすら不要。ただし条件がある。金鉱山の場所を明かした者は殺される。黄金による人生の一発逆転を夢見て、男たちは泥に塗れ、穴を掘って掘って掘りまくる。ブラジルの最底辺を鮮やかに切り取る異形の記録。

NHKスペシャルで放送された番組の書籍化。アマゾン奥地の不法金鉱山の無法地帯はとにかく迫力がある異様な社会で、出てくる連中みな本当に凄まじい。NHKスペシャル シリーズ大アマゾンの新作の放送も予定されており期待。


ランニング・マン 文庫 – 2025/11/30

デスゲーム小説の原点、20年ぶりの復刊。
逃げ切れば賞金10億ドル。「走」り続けなければ、死あるのみ。

映画化!グレン・パウエル主演 エドガー・ライト監督
2026年1月30日(金)全国公開

西暦2025年。アメリカは巨大な管理国家と化し、都市には失業者があふれていた。
困にあえぐベン・リチャーズは最高の人気を誇るゲーム番組『ランニング・マン』に出場した。
『ランニング・マン』――それは、全視聴者を敵としながら、逃げ切れば10億ドルの賞金、捕まればテレビカメラの前で容赦なく殺されるという文字通りのデスレースなのだ。
若き日のキングがリチャード・バックマン名義で発表した初期の代表作を、再映画化に合わせて改題・改訳のうえ、ここに復刊!(解説・風間賢二)

 第二次ドナルド・トランプ政権下のホワイトハウスが移民逮捕や強制送還をエンタメコンテンツとして発信し始めたり(記事1記事2)、移民希望者同士でアメリカ市民権を競わせるリアリティ番組が計画されているという報道が出たりした昨今において、アメリカが舞台のデスゲームという設定に嫌なリアリティが浮かび上がっている。『死のロングウォーク』の復刊にも期待。

シェアする

  • 2025-11-15
  • 2025-11-15
  • 読書